File#03 数井浩子 

アニメ、大学、コラム…原動力は「好奇心」!?

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帰国後も現場復帰して順調にキャリアを積んでこられた印象ですが、大学や大学院で学び直そうと思われたのはどのようなきっかけだったのですか?

K)マッドハウス系でキャラデ・総作監を担当したあと、劇場作品に原画マンとして2年くらい参加して、そのときに整体師の免許もとったのですが、きちんと心理学の勉強をする必要があるかなと思ったのがきっかけです。

整体をマスターするうえで、精神面へのアプローチの必要性を感じたということでしょうか…それで、大学や大学院で心理学を?

K)はい。社会人入試でICUに入学したのですが、キャンパス内にはカール・ロジャーズ(注1)の来談者中心療法を実践している臨床研究所がありまして、そこで心理学の現場にはじめて触れました。
実際の心理学は思っていたよりも科学的で面白かったですね。その後、臨床心理から始まって、発達心理、社会心理、環境心理、犯罪心理を学んで、最後に認知心理学にたどり着きました。4年生のときに、ジブリ助成研究(注2)でアニメーターの熟達研究を論文にしましたが、今もコラボレーション研究や人材教育研究を続けています。アニメの仕事でカナダに行ったときと同じで、原動力は単純に「好奇心」だけでしたね。

次々と、フィールドを広げていかれるその行動力に感動します!で…、つまるところ「好奇心」が原動力なんですね?

K)現実に「好奇心」だけで行動するのは、さすがに無茶かも知れません。
でも、見たい!知りたい!体験したい!と思うことがあったら、とりあえず一歩踏み出してみることはオススメします。行動してみると、思いがけない分野の人たちと出会えるので、それが仕事や研究のヒントになったり、たまに、そういう人たちから新しいお仕事をいただいたりします。実は、コラム連載も文章講座で一緒だった人から紹介していただきました。

それで、コラム連載も? とてもユニークで興味深いです。

K)もともと“書く”ことも好きだったので、それで文章講座にも通っていました。大学院に通っていた時期には、シナリオも書かせていただいたのですが、実は動画時代に、青山にあるシナリオセンターに通っていたこともあって、10代のときから、作画も文章も両方できたらいいな、とは思っていました。

なるほど。連載コラムの反響、特に同じアニメーターさんからの反応などはいかがでしたか?

K)女性スタッフから、“女子が活躍してくれてうれしい”と言われたことがありました。ギャランティなどでは性差はないのですが、業界もまだまだ男性スタッフのほうが多く、スタジオによっては保守的で男性中心社会のようです。女性スタッフは、控えめで目立たないほうが「かわいげ」がある、と。
ネットのニュースサイトでの女性アニメーターのコラム連載は「かわいげ」はなかったかも知れませんが、同じ女性スタッフからは、同性が頑張っているケースとして仕事の励みにしてもらえたみたいです。

[AERA_記事 2013年]

注1) カール・ロジャーズ(1902~1987):カウンセリングの祖といわれる。来談者中心療法の第一人者であり、現代カウンセリングに重要な基本的概念である「受容」「共感」「自己一致」を紹介した臨床心理学者。晩年は世界の紛争地域で活動し、その世界平和活動により1987年にノーベル平和賞候補となった。
注2) ジブリ論文:「アニメーション文化活動奨励助成制度」の一環として、徳間アニメーション文化財団が、ほぼ毎年、1~2名に研究論文のための助成を行っている。2007年度に「アニメーション作画における習得プロセス(アドバイザー:大塚康生)」にて研究助成を受けた。