File#02 吉田忠勝 

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伝説の?・・ゴムマルチ

『ナウシカ』の王蟲は・・足の数もすごくて、触手がうようよと動きますよね。あれは原画描くだけでも相当大変だと思いますけど、動画での苦労話はありますか?

Y) 動画も・・そうね、大変でしょうね。わたしはそこまでは・・見に行かなったんですが。だけど、その時の気持ちが、入ってたから、その熱意で出来たんでしょうね。今、考えたらとてもじゃないけど、ダメですよ(笑)

王蟲のアニメーションは「ゴムマルチ※」という、特殊な方法で動かしたりしてたんですよね。・・その部分で苦労はありましたか?

Y) あれはね・・宮崎さんがね、撮影室に入っていろいろ苦労しながらやってたんですよ。あーでもない、こーでもない、、って何回もうまくいかなくって。

作画では、その王蟲の動きがうまく出来そうになくて、そういった試験的なことをされたんでしょうか?

Y) そうね・・作画で上手くいかないっていうよりは、宮崎さんなりのアイデアとして、「こうしたらどうか?」っていう発想が出たんだと思いますよ。ちょっと・・異様な感じを出したくて。それで、、何回も撮影で試すんですが、「あ~~うまくいかない!」って頭を抱えながらやっていて。

そういうことって、宮崎さんお一人で考えるんですか?・・それとも何人かで?

Y) いや~~撮影の人は何人かはいたけれど、そういう独特の発想は宮崎さん一人じゃないかな。。何度も何度もうまくいかないって・・それで最後には「うまくいった~~!」って大喜びしてましたよ。子供みたいに無邪気に・・(笑)

そうだったんですね。「ゴムマルチ」は王蟲の外殻をバラバラに分解して裏にゴムを貼ったりしていて、なんだか工作の世界だな~、面白いな~て思ってました。

Y) そうなんですよ、だからとても原始的なやり方でやっていて、今だったらもっと簡単にできたのかもって思いますけど・・

たしかに、今であれば3DCGでモデリングして・・王蟲の群衆なんかは無限に複製し物理エンジンによって動かすことになりそうですね(笑)

Y) しっかし、ほんとに・・今こうやって当時のものを見ると こんなことよくやったなあ~って思いますよ、やっぱり・・当時の若さでしょうね(笑)

こうやって、たくさんの資料を大事に残されていて、感慨深いです。たいへん貴重なものを見せていただいてありがとうございます。


※ゴムマルチとは
十数片の殻からなる王蟲の体をそれぞれ違ったタイミングで動かすことは当時の撮影台では不可能であったため、これを可能となるよう考案された装置のこと。
殻の一片一片を柔軟性のある素材でつなぎ、それを伸縮させて殻と殻の間隔を増減することにより王蟲の体の動きを表現している。この柔軟性ある素材に平ゴムを使用したことからゴムマルチと呼ばれるようになった。